皮膚トラブルについて
皮膚の病気には、たくさんの種類があります。
原因にしても、細菌、ウィルス、真菌、外部からの刺激によるもの(外的因子)、健康状態、発汗、皮脂分泌、自己免疫、アトピー素因など内部の要因によるもの(内的因子)、また老化によるものなど色々です。
すぐに治る病気もありますが、根気よく気長につき合っていく必要のある病気も少なくありません。しかも治療法は限られています。しかし、たとえ決定的な治療法が無い場合でも、適切な塗り薬を選択し、また、その塗り方を工夫し、必要に応じて飲み薬も併用し、より良い状態を保つように導き、慢性的な皮膚病とも上手につき合っていくお手伝いをいたします。
また、「皮膚は内臓を映す鏡」という言葉を耳にされたことがおありかと思います。それは、内臓をはじめとする体内の状態や血行、ホルモンバランス、ストレスの有無などが複雑に絡み合って、皮膚に現れてくることが少なくないということです。
そのため、皮膚の症状から内科の病気が見つかるケースもありますので、皮膚の異常が見られたら軽視することなく、早めにご相談ください。 美しいお肌はもとより、全身的な健康をもたらしますよう、皮膚科医として最大限の努力をいたします。
■ 以下によくみられる皮膚疾患について、ご説明いたします。
▼ アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に続く疾患です。掻くとさらに悪化し、悪循環を招きますので、きちんと治療することで痒みを抑える必要があります。
多くは皮膚が乾燥しやすい素因を持ち、喘息のほか、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎のある家系に出やすい傾向があります。
また、ダニや食べ物などのアレルギーが起こりやすいのもアトピー性皮膚炎の特徴です。
アトピー性皮膚炎の治療は、ぬり薬(保湿剤、免疫調整剤、ステロイド剤)、のみ薬(抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤)などで治療します。
▼ 湿 疹
皮膚科を受診される患者様に、非常に多く見られる疾患です。ブツブツや小さな水泡、赤みなどが混ざって現れ、痒みをともないます。
原因として考えられるものには、外的刺激やアレルギー、薬剤などがあります。湿疹・かぶれなどは痒みをともなうことが多いため、ついつい掻いてしまいがちです。しかし、掻いて治るようなことはもちろんありません。患部をかき壊すことによって、化膿や悪化を招き、患部が拡大してさらに痒くなる、という悪化のサイクルに陥りがちです。痒みや炎症を抑える薬を上手に使って、こうしたサイクルを断ち切る必要があります。
▼ じんま疹
痒みの強い、丸っぽい形をしたわずかに盛り上がったミミズ腫れができて、数分~24時間以内に消えていく皮膚疾患をじんま疹と言い、4週間以内に治るものを急性じんま疹、それ以上続くものを慢性じんま疹と言います。
じんま疹の原因は、食べ物や内服薬、細菌やウイルスの感染など様々で、検査としては皮内反応や血液検査IgE RAST法、一般血液検査等を行いますが、慢性じんま疹では原因が特定出来ないことが少なくありません。じんま疹の治療には抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などを使います。
▼ 水 虫
水虫は、白癬菌(はくせんきん)という真菌(カビ)の一種が足の皮膚に入り込むことによって発症する疾患です。白癬菌の増えやすい夏に症状の悪化しやすいのが特徴で、足白癬は趾間型(しかんがた)、小水疱型(しょうすいほうがた)、角質増殖型に分類されます。
趾間型は、足指の間の皮膚がふやけたように白く濁り、痒いのが特徴です。
冬は症状が治まりますが、夏になると再発し、2次的に細菌感染を併発しやすいタイプです。
小水疱型は、土踏まずや足の縁などに小水疱が多発します。これも夏に悪化し、痒みをともないます。
角質増殖型では、足の裏から縁にかけての広範囲で皮膚が厚くなり、冬の方が乾燥でひび割れ等を起こしやすくなります。
治療は、病態に応じて塗り薬や飲み薬を使います。
▼ イ ボ
ウイルスの感染によって発症して人から人へと感染し、うつったイボはいじることで、どんどん増える傾向があります。
イボの治療としては、液体窒素療法、内服療法などがあります。
▼ たこ・魚の目
たこや魚の目は、足の特定の場所に継続的に圧力がかかることによって発症します。
たこは皮膚の表面の角質が部分的に肥厚したもので、痛みはありません。魚の目は肥厚した部分にさらに圧がかかって硬くなり、芯をもっているため、歩くたびに刺激されて痛みが走ります。
また、足の裏によく出来るのが足底疣贅(そくていゆうぜい)という一種のイボで、これを魚の目と勘違いすることがあります。しかし、これはウイルス性の腫瘍であり、鑑別をきちんとつけるためにも、皮膚科専門医の受診をお勧めします。
▼ ヘルペス
単純ヘルペスウイルスの感染で起こり、顔にできる1型と外陰部や臀部などの下半身にできる2型ウイルスの2種類があり、初感染で口内や外陰部に発疹が生じたときは高熱と激痛がともないます。
ヘルペスの治療としては、抗ウイルス剤の内服と外用薬の塗布をします。
しかし、単純ヘルペスウイルスは神経節に入って潜伏するため、薬で完全に除去することは出来ません。寝不足、疲労、風邪などによって免疫力が下がると増殖して再発しがちです。
▼ 脂漏性皮膚炎
脂腺の多いところに生じる湿疹で、頭部や顔、胸背部などに出来やすいのが特徴です。新生児や乳児に多く見られますが、大きくなるにつれて自然に出来なくなっていきます。
一方、問題なのは中高年の方の場合で、頭、顔、耳にフケがしつこく出て、痒みもあり、とても憂うつなものです。
原因としては皮脂が皮膚の常在菌に分解され、その分解産物が皮膚に刺激を加えるためと考えられています。また、でんぷう菌(マラセチア)の関与が指摘されています。脂漏性皮膚炎の治療として、まずは適切な洗顔・洗髪で皮膚を清潔に保ち、ステロイドの外用薬や抗真菌薬を塗ります。
▼ 帯状疱疹
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって発症します。
頭部から下肢までの間の片側の一定の神経支配領域に神経痛に似た痛みをともなう小水疱が帯状に出来ます。顔に出来ると眼合併症を起こしたり、顔面神経麻痺、内耳の障害によるめまい・耳鳴りなどが起こることがあります。
痛みは長い間続いてしまうことがあり(帯状疱疹後神経痛)、この痛みに悩まされることが少なくありません。
帯状疱疹は、皮膚科を受診して、とにかく早く治すことが大切で、これにより帯状疱疹後疼痛の発生頻度をより少なくすることが出来ます。